SEにコミュニケーション能力は必要なのか?その実体を現役SEが解説します!
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就職活動時にこんなフレーズを聞いたことはないでしょうか。
「SEはコミュニケーション能力が重要です!」
いまやどんな職種にもコミュニケーション能力が求められるようになりました。
ただし一般的にはシステムエンジニアにはコミュニケーション能力は必要ないんじゃないの?と思われることがあります。
「パソコンに向かって黙々と作業しているから問題ない」というイメージがあるのではないでしょうか。
しかし就職活動などでは技術は後からつければ問題ない、必要なのはコミュニケーション能力としきりに謳われています。
果たして実際はどうなのでしょうか?
SEにもコミュニケーション能力は必要なのか考えてみます。
コミュニケーション能力の必要性
私はシステムエンジニアとして長年働いていますが、そんな私から見て、確かにコミュニケーション能力は必要です。
コミュニケーション能力を求められる役割が多いと言ったほうがよいでしょうか。
私が新卒で就職活動をしていた頃は「はっ?コミュニケーション能力って何だよ」と思っていたものですが、いまならその必要性が理解できます。というよりも”コミュニケーション能力”という言葉は色々なところで使われ過ぎたため、最近はなんだか陳腐化してますよね。もっと具体的に説明したほうがいい気がしています。企業の人事なんて現場の第一線で活躍しているエンジニアではないので、彼らすらその本質をわかっていないことが多いです。
そのため今回はシステムエンジニアにとってのコミュニケーション能力というものについて後ほど詳しく解説していきたいと思います。
ちなみにSEに求められる能力は当然コミュニケーション能力だけではなく、基礎的な能力やシステム知識はもちろん必要になります。社会人としての基礎スキルは働く以上身に付けなくてはなりませんし、専門知識として、システム知識はあらゆる場面で求められるので重要な要素です。システム知識のないSEはほんとに使い物になりません。
ただしその中でもいわゆるコミュニケーション能力は重要だと言わざるを得ません。
なぜなのか?
それは簡単なことでシステムエンジニアも人と会話する仕事だからです。会話といってももちろん雑談ではありませんよ。(雑談が重要な局面もありますが・・・)
一つのシステムを作るにしても、様々な人たちと会話する必要があります。それは顧客であったり、上司であったり、同僚、部下とほかの職種となんら変わりません。
SEは自分の作業だけ黙々とやってればよいと思うかもしれませんが、自分の作業に落とし込むためには会話しなければならないのです。
そういった意味で優秀なSEになるためには、専門知識としてのシステム知識も必要だし、社会人としてのスキルであるコミュニケーション能力も必要となってくるわけです。かなり高度な職種と言えますね。私はもっとSEは社会的に認められていい職業だと思います。これだけ専門性が求められるのですから。
さてそれでは具体的にSEにとって必要な”コミュニケーション能力”というものがなんなのか解説していきます。
顧客との調整力
例えばシステムの仕様を一つ決めるあたっても、
「どんなときに使うのか」
「どのようなことがしたいのか」
「期待する効果はなにか」
etc・・・
こういったことを顧客から聞き出す必要があります。残念なことに顧客は具体的なイメージを持っていないことが多いです。
「まあいいから、いい感じに作ってよ」
こんな顧客はいまだにいます(笑)。経験の浅いSEは
と意気込んで自社に戻って開発に着手します。しかしここで顧客との対話を止めてしまうと・・・ユーザーテストにおいて「こんなんじゃない!」と怒号の嵐が飛んでくることが容易に想像できますね。
と思うかもしれませんが、私たちSEが考える「いい感じ」は顧客にとっての「いい感じ」と同じとは限りません。
顧客は当然その業務のプロです。私たちSEはシステム開発のプロかもしれませんが、その業務のプロではないのです。そして顧客自身もその”いい感じ”というイメージは実際に使ってみなければ具体化しないのです。そこで私たちSEの仕事は、顧客と会話しながらそのイメージを固めてもらって、認識をすり合わせていくことなのです。
そんなときにふわっとしたイメージだけでしゃべっても収束しませんから、仮説をぶつけたり、ときにはモック(画面イメージ)を作ってもっていったりと具体的な仕様に落とし込むまでに最大限の努力をするのです。ヒアリングによってこのギャップを埋め合わせてこそ、優秀なSEといえるでしょう。
私はこういった要件定義工程が最大の品質を作ると思っています。開発を楽にするためには要件定義で勝負は決まってるともいえます。要件定義で負けたり、仕様が固まっていないとそのプロジェクトは炎上します(笑)。つまり顧客と会話して、認識合わせするということはSEにとって非常に重要な作業なのです。
プロジェクト内における会話の重要性
さて顧客との調整がうまくいき、具体的な仕様に落とせたとします。その次はいよいよ開発に移ります。しかし開発に入ればコミュニケーションスキルが不要とはなりません。
と思う人もいるかもしれませんが、会話は顧客とだけではないです。
例えば業務アプリケーションを作成する場合、一人が担当できる範囲などはごく僅かです。
たくさんの人たちが一つのシステムを作り上げます。要するに協力プレーなのです。
そのため当然、自分の担当範囲だけではなく、周囲の関連する場所を担当している人と会話して、足並みを揃えなければなりません。(共通化、汎用化という作業は品質の良いシステムを作るためには必須です)
要するに自分の作業だけやっていれば確かに問題ないかもしれませんが、その自分の作業を具体的にするまでにコミュニケーションを必要とするのです。勝手に進めて、間違った成果物を作っても意味がないのは言うまでもありません。
結局どんな仕事もそうですが、一人ではなにも出来ないのです。もちろん一人でなんでも出来るスーパープログラマーは別ですが、エンタープライズITを作っていくSEにおいては、すごいプログラムを書ける必要はまったくないのです。
銀行の勘定系システムなどでいまだにCOBOLが使われている理由の本質もこういうところにあったりします。
成果物を説明する能力
顧客と調整した仕様をもとにやっとのことで設計書を完成させたとします。しかしこれでSEの仕事は終わりではありません。
内部レビュー、顧客レビューと成果物は必ずレビューを受ける必要があります。その際に求められるのは自分の作った成果物を的確かつ簡潔に説明する能力が求められます。
設計書が完璧だとしても、このレビューの質疑応答を誤るといつまで経っても完成しません。成果物は関係者に納得してもらって初めて完成するからです。
さらにレビューというのは面倒なもので、真っ当な指摘もあればどうでもいい指摘も結構あります。このどうでもいい指摘をうまーく論破してつぶしていく能力が必要です。もちろん真っ当な指摘は甘んじて受け入れて、修正する必要がありますが、どうでもいい指摘に答えられなかったり、本質的ではない修正を受け入れてしまうと仕事は増えていく一方です。
私は社内で新人教育なども担当しているのですが、よく新人に言うのは「今はまだすべての指摘にはいそうですかと答えていると思うけど、そこから一歩成長するためには、どうでもいい指摘をつぶす能力が必要となる」ということです。どうでもいい指摘と言うのは、徹底的にその場でつぶすのです。そのためには、その指摘をした人が何を考えているのか、どこに納得していないのかを対話から引き出す必要があります。
そして納得させるのです。
これはコミュニケーション能力以外の何物でもありません。
システムエンジニアの仕事は多岐にわたります。そのため余計な仕事が増えると、その分重要なマターにかける時間が少なくなるのです。
つまり自分の作成した成果物をきちんと説明できる能力は、スケジュールを守ったり、余計な仕事を増やさず自分を守るために非常に重要な能力となるのです。
まとめ
現役のシステムエンジニアから見て、コミュニケーション能力の必要性について具体的な例を用いて考察しました。
その結果
・SEにもコミュニケーション能力は必要
・仕様を決めるためには、顧客との会話が重要
・自分の作業に落とすまでが重要であり、優秀なSEはそれが出来るから成果物の品質が良い。
ということが言えると思います。SEはシステムに対する専門性は当然のこととして、さらに高度なコミュニケーション能力を必要とする難しい仕事なのです。ただしその分やりがいはありますけどね。要件定義の工夫によって後続の開発工程がうまくいったときなんかものすごい達成感を得ることができますよ。
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