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IT業界は工数商売となりつつある?赤字プロジェクトの背景に迫る!


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 IT業界は工数商売となりつつあります。その背景には赤字プロジェクトの多発が!?

IT業界での契約方法をご存じでしょうか?

契約の元となる数字の一つに「工数」という概念があります。

人月商売とも呼ばれますが、人の時間を売り買いするようなやり方です。なんか無機質ですよね。システムという無機質なものを取り扱っているだけに余計さみしい気持ちになってきます。

ただIT業界ではこのやり方が浸透しつつあります。その背景には赤字プロジェクトの多発があるのですが・・・

本日はこの見積もり方法が主流になりつつある背景を解説します。

 

IT業界の契約方法

IT業界の発注方法、契約方法は主に以下のようなものがあります。

①ソフトウエアを作成して販売する
これはイメージがつきやすいと思います。ユーザのニーズを読み取り、それをソフトウエアとして作成し、販売する方法です。作成に掛かる初期費用が一番大きいので、数を売ってこの作成に掛かる費用を回収していくイメージですね。当然初期費用を回収し終えた後は、販売に掛かる費用を除き、利益となっていきます。

最近流行っているスマホアプリやソーシャルゲームもこのパターンですね。もちろん無料で配信して、広告費で収入を得るというやり方も存在します。

②顧客のほしいものを請け負って作成する
顧客(主に企業)がやりたいことを提示して、それを実現するためにはいくらですといって契約する方法です。作成側は、顧客のやりたいことを実現するために実際に掛かる費用(主に人件費)に利益を上乗せして提示します。

この掛かる費用の見積もりが間違っていたりすると、コストオーバーで赤字になったりします。通常顧客側は複数のIT企業に見積もりを依頼し、コンペによって発注先を決めます。公共工事の発注に似てますね、これがIT業界がITゼネコンと呼ばれる所以です。

 

赤字プロジェクトはなぜ発生するのか

ソフトウエアを作成して販売する方法の収支は、ある意味わかりやすいですね。

損益分岐点と呼ばれる利益が出る本数が売れれば儲かるし、売れなければ損失になります。

何本売れたかという明確な数値によって収支が決まるのでわかりやすい。

では請負作成の場合どうでしょうか。

顧客の提示した内容を実現するために掛かる費用の見積もりはあくまで見積もりであって簡単に言えば予想です。

この予想がはずれて、想定以上にコストが掛かれば即赤字です。

ではこの予想がはずれる要因はなんなのでしょうか。

 

・顧客の要件がはっきりしていない、変更される

顧客側はITのプロではないですし、要件を提示する段階ではっきりとやりたいことが決まっているわけではありません。

そのため顧客の提示する内容は悪く言えば曖昧なことが多いです。

これを具体的にしてシステムの仕様を決めていくのがシステムエンジニアの仕事なのですが、見積もりの前提以上のことを要求されることがよくあります。

顧客側に悪気があるわけではなく、よくよく考えてみるとあれもやりたい、これもやりたいというのが必ず出てくるんですね。

完全に契約前提を超えることがはっきりするような内容は、追加費用をもらうことになりますが、そんなことは少なく、「確かにそのようなニュアンスのことが依頼に書いてあるけど・・・」というグレーがものが多いです。

発注側(顧客)と受注側(IT企業)では、当然発注側の立場のほうが強いので、追加費用なしで対応せざるを得ないこともあります。

こういうことが積み重なってコストがどんどん増えていき、当初見積もりをオーバーするという図式です。

 

・品質が悪い

作ったはいいですが、テスト工程にてバグが大量に発見され、改修するのに想定以上のコストが掛かってしまうパターンです。

単純に実力不足のこともありますが、よくあるのは見積もりでの失敗です。

先ほど受注先はコンペにて決定すると書きましたが、発注側からすれば当然安い方がいいに決まっています。

そのため受注したいがために、コストを異常に低く見積もって提案してしまうと、無理な納期、少ない体制でプロジェクトを運営することになり、結果品質が悪くなります。

無理に低く見積もって、受注したはいいですが、結局赤字になってしまうことになりますね。
(IT業界でブラック企業といえば、まさにこのパターンが多いです。とにかく値段を安くして受注し、人力でカバーしようとすると従業員に負担がかかります)

この請負契約において予期せぬ赤字プロジェクトが増えてきて、訴訟にまで発展するケースが珍しくなくなってきました。

そのためこの請負契約を変える動きが増えてきているのです。

 

工数契約が増えてきている

このような背景もあり、作成するシステムの規模の見積もりとして工数という概念が主流になりつつあります。"人月"とも表現されます。

どういうことかというと、このシステムを作るのに30人で一か月かかるという場合には30MM(Man/Manth)という工数になります。

つまり人貸しのような商売になってるんですね。顧客側も出来たシステムの価値で値段を決めるのではなく、出来たシステムがどのくらいの人数で作れるかによって値段を決めているということです。

"本当にこれでいいのか?"と考えてしまいます。例えば何かものを買うときは、そのものの付加価値(機能)でお金を払いますよね。付いた値段に見合う価値があると判断すれば購入するし、その価値がないと思えば購入しません。

このものを作るのに何人の作業が必要だろうなんて考えて、ものを買うことはまずありません。

ITの価値ってなんだろうと考えてしまいます。

IT企業に勤めるものとして、自分の作ったシステムに「これだけの価値があるから、これだけのお金を払っても損はない」と、自信をもって言えるようになりたいですね。作業量ではなく、システムの価値で勝負する世界になってほしいものです。

しかし現在はその作業量にいくら時給を払うかという概念の契約になってしまっているということですね。

赤字プロジェクトが多発した背景があるため、ある程度仕方ないのですが・・・

ただ赤字プロジェクトは発注側と受注側双方にとって不幸なことですから、双方が納得できる契約形態がこの人月商売ということなんでしょう。

 

まとめ

IT業界において工数契約が増えてきている状況を解説しました。

その背景には赤字プロジェクトの多発があります。

システムという無機質なものを扱っているだけにもっと人間らしい方法を模索したいものですね。

 


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